転落 #13(完)

08 転落




新型コロナに感染して、自宅待機。

体調はすっきりはしないが、悪いわけではない。

熱も微熱。

ずっと部屋に引きこもる。

仕事をする気力はない。

ぼーっとテレビを見る。

いまいち、集中できない。

1週間あるのだから、動画のサブスクリプションを契約しよう。

いろいろドラマをみてみた。

ようやく没入できるドラマが見つかった。

殺人事件の犯人が逃走するドラマ。

これぐらい刺激がないと、今の私は没入できない。

刺激的な内容が続く。

ドラマの世界に、どんどん引き込まれていく。

続きが気になり、次のエピソードのボタンをクリック。

そして…気がついたら、夕方になっていた。

1日中、犯人が逃走・潜伏するドラマを見ていた。

「動画サブスクリプション作戦成功」

退屈になりそうな1日があっという間に終わった。

新型コロナ感染。

転落。

そんな現実から、ドラマの世界に。

ふと、思う。

「明日もこの部屋で1人、過ごすのか…」

やるせない気持ちになる。

はぁ。

まだ続く、この生活…。

あれ?

私は、なぜ、この部屋に閉じこもっているのだ?

あれ?何か悪いことをしたのか?

犯罪でも起こした?

あれ?最近、目の前で誰か殺したような…

都道府県教育委員会1年目の冬。

私は、現実とドラマの世界の区別ができなくなっていた。


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