#45 スライムくん③

07 人生はゲーム




スライムくん。
いつもと変わらず、スライムくん。

私は日々癒やされている。

そんなスライムくんに大ピンチが。

スライムくんがいないところで、スライムくんが話題になっている。

正直、ほとんど話題にならないスライムくん。
いても、いなくても、周りにはあまり影響がない。

実際、数日間休んだときも、特に何もなく、他の人達は仕事をしていた。
そして、何もなかったように、スライムくんは出勤し、仕事をしていた。

そんなスライムくんが話題に。
もちろん、良い意味ではない。

悪い意味だ。

「あの業務のこと、どうなっているのだろう」

スライムくんの業務である。
しかも、今回は、多くの人が携わる。

それを束ねるのが、スライムくん。
心配だ。

そして…スライムくんは、すべきことをきちんとできているのだろうか。

話を聞いていると、スケジュール的にかなり遅れているようだ。
他の人は、やきもき…いや、イライラしているのに、スライムくんは、一向に動き出す様子がない。

(これは、大変だ)

そう思った私は、スライムくんに聞いた。
何気なく聞いた。

「例の件、どうなっていますか?」

「大丈夫」

あれ?聞いていた話と違う。
もう少し聞いてみた。

「気にしている人がいるけど」

あえて、「怒っている」とは言わなかった。
するとスライムくんは…

「そうかあ。でも、仕方ないので」

よく話を聞いていくと、仕方がなくない。
全く、仕方がなくない。

「ただただ、遅い」

関係のない私でも、

「これは、遅過ぎる」
「大丈夫と言っているスライムくんは、ヤバい」

さすがに、私も、これは言っておくべきだと思い、他の人達が「心配している」ことを伝えた。

「そうかあ。また、話ししてみる」

おお。スライムくんのノンビリさが恐ろしい。

「明日、あさイチで話しした方がいいですよ」

「そうかあ。じゃあ、準備しておく」

そう言ったスライムくん。

いつになく真剣な面持ちで仕事をしていた。
(ようやく、ことの重大性が分かったのかな)

さて、定時となった。
危機が迫っているスライムくん。

いちおう、声をかけた。

「帰りますか?」

「帰るよ」

明日、大丈夫なのだろうか。

そう思いながら、退庁する。

このときのスライムくんは、まだ元気であった。

翌日から、スライムくんは、無口になる。


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