#21 渡された地獄への切符 人生は思うようにならない

00 序章

1月。
私は4月から教育委員会で指導主事。
そう思っていた。

その日は突然やってきた。

校長室に呼ばれ、入室した私の前にいたのは

教育長

「忙しいところ済まないな」

そういうと、教育長は切り出した。


「来年度の4月から、中学校に行ってもらいたい」

私は耳を疑った。

「中学校?」
「教育委員会ではなく?」

私は確信していた。
教育委員会に行くものだと。
後任も試験を受けた。
そして受かっていた。

教育長は続けた。

「行ってもらいたい、というお願いではないんだ。分かっていると思うが」

私はもちろん分かっている。
教育長が来て、直々に話をする。
それは、お願いではない。
決定事項だ。

「はい。お断りするつもりは全くありません」

調子のいい奴だ、と冷静に自分をみているもう1人の自分がいた。

内心は、これ以上ない落胆。

中学校にも小学校にも勤務した。

確実に私は小学校に向いている。
私は器用貧乏。

良く言えば
オールマイティ。

漢字を教えたり、計算の仕方を教えたり、スポーツを教えたり。
いろいろなことをそつなくこなす。

なのに、待っていたのは
「中学校」
しかも、
「主幹教諭」

私は運命を恨んだ。

人生は巡り合わせ。

それは分かっている。

しかし、なぜ、こんなことになったのか。
理由は…私より先に、中学校の主幹教諭が教頭になった。

そのポストが空いた。

まだ教頭試験に受からなかった私がそこに入るのだ。

私と後任と目されていた元同僚。
指導教諭の試験には受かったが、指導教諭にはならなかった。

私がいくはずだった教育委員会に行くことになったのだ。

人生は巡り合わせ。

私が教育委員会に行き、元同僚が指導、という当初の予定。
中学校の主幹教諭が教頭になることで、変わった。

私の教師人生に
「教育委員会」
という新しいステージが加わるどころか
私は戻ることになった。

10年以上ぶりの中学校

しかも主幹教諭

諦めきれない私ではあったが、仕方がない。

心を整理するまでには少々時間はかかった。

中学校から、小学校。
そして、また中学校。
なかなか聞いたことはない。

ネガティブな精神状態になりそうな自分に言い聞かせた。

私は呼ばれて行くのだ。

必要とされて行くのだ。

「頑張るしかない」

そう思って中学校へ。

そこには思った以上の地獄が待っていた。





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