1日限定の担任。感動をありがとう。

03 教育委員会

ある日、出勤した。
すると、学年主任から
「担任が1日休だ。今日はそのクラスの担任をしてくれ」

突然、私は「1日限定の担任」となった。

「担任」

私にとっては、ほぼ2年ぶり。

懐かしい響きである。

中学校での担任は、結構苦労した。

小学校での担任は、楽しくて仕方がなかった。

そう、私は小学校の方が合っている。

中学校という地獄の始まり

この日、13年ぶりの「中学校担任」

「1日限定」であるが、楽しみだ。

若い頃、中学校の担任をしたが、うまくいったとは正直いえない。

しかし、小学校での担任の経験は、私の担任としてレベルアップさせた、と思っている。

それを発揮するチャンスが突然きたのである。

実はそのクラス、やや荒れている。
担任は、淡白なタイプ。
やるべきことさえすればいい。
そんな人。

だから、クラスの雰囲気もあまり良くない。

だから、1日限定ではあるが、何かしてやろう、そう思った。

何か子ども達が頑張れる、ワクワクすることができないか、私は考えた。

そこで、したこと。

「今日一日、頑張った人の紹介」

今年度からのGIGAスクール構想で、タブレットが1人1台提供されている。

そのタブレットを使って、授業で利用しているのが

「ロイロノート」
 
今年度から使用して、10ヶ月が経過したが、今や授業に欠かせないアプリ。

今回はそのアプリの機能の
「意見提出箱」
を使う。

朝の会で子ども達に言った。

「私はあなた達のクラスの授業は担当していない。
今日は1日限定だが担任。
あなた達の頑張りを知りたい。
今日の帰りの会で質問します。
『今日頑張った人は誰ですか?そして、その理由は?』と。
今日一日、周りを見て、そして、考えておいてください」

子ども達の反応はさまざま。

「楽しみ!」

「そんなの、分からない」

「俺、頑張る!」

特に反応のない子どももいた。

さて、この結果は…。

その日、私はある班の掃除を見に行った。
一生懸命していた。
もともとそうだったのか。
それとも…
頑張った名前をあげてほしい、そう思ったのか。
理由は分からないが、一生懸命に掃除をしていたのは間違いない。

さて、帰りの会。
いよいよ投票だ。

その前に、私は例として書いた。

「2班 掃除を一生懸命していました」

2班の子達は嬉しそうだった。

さて、子ども達の番だ。

「えー、書くことないし」

そういっている女子生徒もいた。

だが、子ども達は、黙々と打ち込んでいる。
そして、どんどん提出される。

書くことがない、と言っていた女子生徒も、ちゃんと書いて出して来ている。

「帰りの会の時間もあと少し。私は1日限定の担任。だから、そろそろ提出を締め切って、みんなでみるよ」

未提出はあと1人。

目立たない女子生徒。

隣の子に促されていた。

「これで、いいのかなぁ」

「いいさ。提出しよ」

ようやく、全員が提出した。

提出されたものをみんなで見ていく。

授業で頑張った人の名前。

係の仕事を手伝った人の名前。

子ども達は、素直に書いてくれた。

子ども達もワクワクしながら、みている。

さて、最後の生徒。

あの、女子生徒だ。

提出を躊躇っていた生徒。

その生徒は、こう書いてあった。

「先生」

1日限定の担任。

忘れられない1日となった。

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