試練の夏#10

06 試練の夏




教育委員会にきて、驚いた業務。
それは、挨拶文を考えること。

自分がする挨拶ではない。
知事や教育長、課長がする挨拶を考える。

国会での答弁も同じだ。
事務方が原稿を作り、答弁に関する情報を持っている。

そういう様子を報道でみて、知ってはいたが、まさか自分が挨拶文をつくる立場になるとは…。

しかも…何十年に一回が回ってきて、挨拶文を考える羽目に。

さらに…この挨拶文を完成させるまでの道のりは、とてつもなく長い。

まず、資料をもとに考える。
挨拶なんて、考えたこともない。
他の事業の挨拶文を参考にするが、内容が異なる。

作るのには、とても時間がかかる。
だが、これはあくまでも入口。

ようやく完成させたものだが、決して満足ができる内容ではない。

すると「直し」ということになる。
そのときに、具体的に「このように直せ」なら、ただただ直すだけで済む。

しかし、そうはいかないこともある。

資料だけ渡されて
「これを参考にして作ること」

ますます、文章がごちゃごちゃしてくる。

そんな状況でも、仕上げないといけない。

仕上げても…自分が作った時のものは半分もない。
ほぼ原型がない状態になる。

心を無にして、ただただ直して、提出するのみ。

それが一ヶ月続く。

ごちゃごちゃしてきて、自分のものではなくなる。
それを提出する。

指摘を受ける。
もう、自分の文章じゃなくなる。

でも、指摘を受ける。

修行以外の何物でもない。

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