Xデーが迫る中、ついに声がかかった。
「今日は午後から、予定は空いているか?」
担当係長からである。
「特に予定はありません」
嘘である。
予定はある。
だが、変更できる予定。
そして、変更した。
変更して、午後は個人作業のみ。
いつ呼ばれても大丈夫だ。
ビッグプロジェクトの話であれば、その返答は考えてある。
「ビッグプロジェクトに力を注ぎたい」
「だから…他の業務について、配慮をお願いしたい」
私が出した結論。
ビッグプロジェクトの担当への道を進む。
そして…他の業務についての私の希望を聞いてもらう。
「交渉」である。
私が避けたい業務。
それは、誰でもできる事務的な業務。
そして、その業務全体を動かせない業務。
私が望む業務。
それは、自分で考え、意見をもらいながら自分で修正。
そして、自分が中心となり、進めていく業務。
ここに来て思った。
何かを成し遂げるために、最も障壁となるもの。
それは、自分自身の忙しさ。
そして…仕事の邪魔をする人々。
それを排除して、そのビッグプロジェクトに私は乗る。
いよいよ、担当係長から、打診がある。
私は予定を空けた。
声がかかった瞬間から、動き出す。
夕方…まだ声がかからない。
予定を空けて、個人作業の業務を始めて、3時間。
ビッグプロジェクトのことが気になって、いまいち作業が進まない。
「係長も、どう話をしようか、迷っているのだろう」
そう思った。
ビッグプロジェクトだからだ。
そして、ついに、声をかけられた。
「来た」
そう、心の中で、呟いた。
「待ってました」
そういう心境だった。
係長は言った。
「来年度の予算のことだが…」
???
(ビッグプロジェクトのことじゃないのか?)
そして、予算の話をした。
もちろん、ビッグプロジェクトとは関係のない話。
(これが、前置きか…係長も考えたのだな)
そう思い、改めて気持ちを落ち着かせる。
私にとっての、大きな決断のときが近づいている。
「では、よろしく」
???
話が終わった。
自席に戻る係長の背中を見る私。
Xデーまで、本当にわずかだ。
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