試練の夏#6

06 試練の夏




学習会の会場である学校に到着した。
あの親切な校長に出迎えていただいた。

そして、今日の学習会の協力をお願いした若い先生が現れた。

会場の機器やICT環境について、事前に連絡を取っていた。
とても丁寧で、好感の持てる先生であった。

だから安心していた。

会場として使う教室に行くと、思っていたよりも使いにくい状況であった。

「とりあえず、準備をした」
そんな感じであった。

学習会用のプレゼンの準備を整えていると、参加者が少しずつ集まってきた。

その中に、「あの学習会担当者だな」とわかる声が聞こえた。
こちらに近づいてくる気配はない。
校長に指導されたその時は、丁重で丁寧であったが、結局はその時だけか。

学習会前に、その担当者から、話しかけられたのは1度きり。
「よろしくお願いします」
それだけだった。

学習会が始まると、学習会の協力をお願いしていた先生が機器の操作をしてくれた。
してくれた、のだが、あまりスムーズには、できない。

「慣れていない」
そう思った。

学習会の前半は順調だった。
後半に行った実習は失敗だった。

時間設定がまずかったのか。
課題の設定がまずかったのか。
当然、私自身に反省点はある。

しかし、思った。

「参加者は、この学習会に前向きではない」

ICT環境が整っていないが故に、ICTを使い慣れていない。

実習中も「どう操作したらいいの?」という会話。
活用以前に、使い方を学習すべき段階だ。

後半の実習は、ただただ時間が過ぎることを待つ時間となった。

私の話を熱心に聞いてくれている人もいた。

ただ、参加者の多くのニーズには応えられていない、そう感じた。

学習会担当者は、仕切りに下を向いて、何かを書いていた。
学習会の記録なのだろうか。

それにしては、顔を上げている時間が少ない。
私が動画を流しても、その動画をわずかな時間見ただけで、また何かを書いていた。

学習会が終わった。
私の初陣は悲しき結果となった。

根本的な問題。

それは、参加者のニーズを掴めなかったこと。

独りよがりのプレゼンではいけない。

次の講師依頼はいつであろう。

その時はニーズ調査を念入りに行う、そう誓いながら、帰路に着いた。

反省点があるものの、一仕事を終えて安堵する私。

すると、電話が鳴った。

「至急、戻ってきて相談することがある」

試練の夏は始まったばかりだ。

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