転落 #2

08 転落




1日目。
翌日からの宿泊出張の準備をしていた。

初めての宿泊での出張。
スーツケースを使うのはいつ以来だろう。

コロナ禍で、宿泊する機会がなくなった。
そうだ。
一年前の家族旅行以来だ。

一人用スーツケース。
私用だ。

一年前の家族旅行では、年末を家族で過ごした。
およそ1年後。

私は都道府県教育委員会にいる。
人生とは、分からないものだ。

「暇なときにどう過ごそう」
そんな心配をしていまう。

私は、そんな性分。
荷物をたくさん持っていき、結局使わず、ただただ運んだだけ。

そんなことはもうやめよう。

もういい歳だ。
必要最低限でいいだろう。

仕事で行くのだから。

出張が近づくと、同僚が聞いてくる。

「どこで、遊んでくる?」

そんな気持ちは全くない。

私は油断をすると、ろくなことが起こらない。
緊張感を持って、仕事をしていないと、やらかしてしまう。

そういう人間。

実は、最近もやらかした。

「顛末書」

初めて書いた。

業務が終わり、請求書を受け取った。
それが土曜日だった。

休日であるから、財務課への提出は、休日明け。
私は、請求書を引き出しにしまった。

そして、達成感を感じ、休日を過し…請求書のことを忘れてしまった。

その請求書は、1か月、引き出しに入ったまま。

支払い期限が過ぎた。
私は「顛末書」を書いた。

そう。
「油断」は禁物。

初の宿泊出張。

「油断」はなかった。

出発前には。


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